『天啓』を持つ者は変わり者が多かったらしい。
 兎に角誰かに指図される事を嫌った。自分で決めた相手にしか従わず、認めない。
 ただ朔埜は自分の出生に後ろめたさを覚えているから、或いは現当主に恩義を感じているから、彼の意を汲む振る舞いをしているが……

 そんな朔埜の心の機微に、乃々夏が気付いている方が問題だろう。乃々夏もまた幼い頃のトラウマで、自分を顧みない相手との結婚は望んでいない。
 ……例え朔埜がどれだけ真摯に乃々夏に向き合っても、心に残る女性の影に傷付く事を恐れている。