『まど……かっ…』
恥ずかしくなるような水音を立て、何度も舌が絡み合う。
自分から焚きつけたくせに腰が砕け、まどかにしがみつくように立っているしかない。
必死に応えようとする私の様子を、まどかは艶めいた眼差しで見つめている。
(……っだめだ…)
助けを求めようかとも思ったが、こうなった夫は手が付けられないことを経験則から悟った私は、諦めて体の力を抜いた。
それを待ち構えていたかのごとく、私を軽々と抱き上げた彼は、病み上がりとは思えない足取りで、灯りのない暗い部屋に入っていく。
そして、先ほどまで自分が横になっていた床の上に私を下ろした。
『…っ、は…』
再び落ちてくる口づけの嵐に息も絶え絶えになっていると、彼はふと体を起こした。
(……まどか…?)
何を思ったのか、まどかは艶やかな唇を舐めてから、そのままぼんやりと私の手に自分の手を重ね、指を絡めてきた。
それから、聞き取れないほどの小さな声で、囁いた。
『珠緒さんが汚れる必要ない…』
『え?』
乱れた裾の間から、彼の細く長い指が滑り込んでくる。
『んっ』
くすぐったさに身をよじれば、さらに裾がはだけてしまう。
彼はむき出しになった私の足首を手に取ると、つま先に唇をそっと寄せ、伝うように口づけていく。
『やっ…』
だんだんと上がってくる彼の唇に、羞恥が煽られた。
時折、悪戯に吸われ、舌が這う。
『珠緒さんが、僕を綺麗にしてください』
『まどか…』
自分の足の間から、整った彼の顔が覗き、強い眼差しが私を見つめてきた。
「……ま」
まどかが変わろうと思ってくれたことが嬉しくて、胸がいっぱいになる。
『うん、うんっ。一緒に、なろう。まどかは汚くなんてないもの。私が綺麗だっていうのなら、まどかだって綺麗だもの』
『珠緒さん…』
幸せそうに頬を緩めたまどかの頭を、包み込むようにぎゅっと抱きしめる。
布も何もない肌に直接彼の柔らかい髪が触れ、またくすぐったくなった。
「………たま……」
彼がそのまま胸元に吸い付いてくる。
「や…まどか」
温かな舌が肌を滑り、冷たいはずの私の肌も熱をもつ。
「お、………きろ」
(起…きろ?何言ってるのまどか。こんなときに寝られるわけないでしょ)
刹那、敏感な場所を舐められ体が跳ねる。
「ん、ちょ、まどか、どこ舐めて……」
喘いだ瞬間。
「おおお起きろっ!!この馬鹿!!」
「いたっ!!!」
バシッと盛大な音とともに、後頭部に微かな痛みが走った。
開けていたはずの目を開ければ、そこには……。
「な、なななな、なめるとか……何言ってんだこの馬鹿!!」
顔を哀れなくらい真っ赤に染めた近衛円、その人がいた。
