私は今年から、大きなこの街の大学に通うことになった。

 家からは遠いけれど何とか通える。
 毎日頑張って電車を乗り継いで、小さな最寄り駅で降りていた。

 高そうな、有名人も来そうなお肉屋さん、おしゃれなカフェ、外装もキレイな神社…

 まだ友達も出来ていない私は、こっそり周りを見ながら一人で通っていた。


 そんなある日の帰り道。
 ちょっとだけ寄り道をしてみようと、いつもの道とは外れた道を通って帰ってみることにした。

 そこはいつもの道とは違い、とても静かな場所だった。
 いつもの道はもう少し人がいて少し広めの道路だけれど、この道は人は少なく、車がすれ違えるか分からないほどの道。

 お寺、小さなパン屋さん、公園…


「あれ…?」

 歩いていた私が見つけたのは、

『ランプ』

と書かれた看板。
 そばを見ると、規模から言ってもとても小さなランプの店があった。

 私は思わず立ち止まる。

(…こんな街の隅っこに…?しかもランプ屋なんて、この辺だと普通なのかな…)

 外から見えるその店の窓辺にはたくさんのランプが並んでいた。
 ランプは半透明なガラスなのか色とりどりの傘をしていて、その傘から漏れるランプの光は、夕方の明かりの中でもよく映えて見える。

(キレイ…!でも、高いんだろうなあ…)

 その時、店の中から、店主だろう年配らしい男の人が私を見つけ、優しげな笑顔で小さく手招きした。

 学校帰りで持ち合わせも無い私。

 私は慌てて苦笑いのまま手を横に振り、そしてそのまま店を離れた。