「ねぇ、1つ気になってたんだけど」



蓮くんは、ふと思い出したように、私に向かって話を切り出した。


私、知らない間に何かやらかしてしまったんだろうか……。



「な、なんですか……?」



不安になって聞き返すと、「そこまで大した話じゃないけど」と言いながら、私のことを顎でクイと合図した。 



「敬語」


「えっ」


「使わなくていい。同い年なんだし、堅苦しいからタメ語で」



いやいや、急にそんなこと言われても……!

オタクの分際で推しに対してタメ口をきくなんて、出来るわけない……!




あくまで、大勢のファンの1人として紛れていればいいものを。 


ファンの中には、メンバーのことを恋愛的な意味で好きになる『ガチ恋』と呼ばれる人や、推しから認識してもらいたい、認知してもらいたいって人もいるけど。



私は、なるべくひっそりと隠れて応援していたいタイプなのだ。


まぁ、今回の蓮くんとの同居生活はイレギュラー中のイレギュラーだから、そこはしょうがないけど……。



「とにかく、そっちこそ変に気を遣わなくていいから。敬語禁止」

 
そんな風に言われてしまったら、もうYesしか選択肢がないじゃないか。