「……そんな風に思ってたんだ」


「はい、まぁ結果的にはバレちゃいましたけど……」


気まずい気持ちを隠すように、頭の後ろをかきながら、目線を横へと外した。



「そうやって俺のこと考えてくれてたのは……素直に嬉しい」 


「えっ」


「プライベートを詮索してきたり、後つけてきたりするような人も、中にはいるから。配慮しようとしてくれてたのがありがたいって話」


まさか、こうして感謝されるなんて思ってもみなかった。


予想外の反応に、何も言葉を返せないでいると、蓮くんは口の端をきゅっと上げて、私に笑いかけた。
 


「それに、気づいてたよ俺」


「え……!? 私がナイクラオタクってことにですか?」


なんて事ないように蓮くんは、サラッと発言した。
それ、私にとっては重大すぎる事件……!!
 


「あんなに挙動不審なら、普通になんとなく気づく」


蓮くんは口元に手をやって、笑いをこらえている。


「うぅ……ごまかせてたと思ってたのに……」

聞けば、私が蓮くんのことを一目見て、すぐさま玄関の引き戸を閉めた時から、怪しいと思われていたらしい。


でも!あれは衝撃的過ぎて、普通にする方が難しいと思うけど。


「そういえば、まだちゃんと挨拶してなかった。これからよろしく」


蓮くんは改まったように、私の方へ体をきちんと向き直してから、そう言った。



昨日あったアレコレのせいで気まずくなったから、私、夕飯一緒に食べてなかったんだよね。


だから今、ようやくスタートラインって感じ。


最初はどうなることかと思ったけど、これなら、推しとの同居生活も一応(?)大丈夫そうかも。


私も蓮くんに応えるように、ピシッと姿勢を整えて、挨拶した。
「こちらこそ、これからよろしくお願いします……!」