あれから数時間後。
「…………」
「…………」
夕食の時間も、2人の間に流れるのはなんとも言えない空気。
なぜか謎に気を利かせたお母さん。
「せっかくなんだから若い子たちだけで楽しんで」って、今日は外に出かけてしまったのだ。
はぁ……京ちゃんも蓮くんも、これから少しの間一緒に暮らす仲間として、ちょっとは打ち解けてくれたらいいのにな……。
1階にある縁側で1人ぽつりとたたずむ。
夜だけど、もうすぐそこに夏が迫っているから、じめじめとして蒸し暑い。
そろそろ自分の部屋に戻ろうかな。
そう思って、立ち上がろうとしたタイミングだった。
「なんだ、七瀬か」
「あっ……蓮、くん」
あれから至って普通の様子の蓮くん。
今だって、特に変わった素振りは一切見せていない。
私ばっかり気にしちゃってるみたいで、なんだか恥ずかしくなる。
「俺も少し涼んでいこうかな……っていっても、地味に暑いけど」
そう言いながら、蓮くんは私のすぐ隣に並ぶようにして腰を下ろした。
蓮くんの中では、まるっきりなかったことになってるのかな……。
『俺のことだけ、好きでいてよ…………』
あの時の声が、後ろ姿が、ずっと頭から離れない。
それどころか、ますます蓮くんのことが気になってしょうがない。