あれから数日、蓮くんの顔を見ていない。

というのも、あの翌日から泊まりこみで仕事だったらしい。


今日の午後帰ってくるって、お母さんが言っていたから、もうそろそろかも。



でも蓮くんの仕事が立て込んでいてちょうど良かった。

どんな顔して話せばいいか分からなかったし。

だって、あんなの……。



『俺のことだけ、好きでいてよ…………』

今でも鮮明に思い出せる。

思い出すだけで、体中が熱くなってしまう。


もし……私の考えが合ってるなら、蓮くんはヤキモチをやいてたってこと、だよね。

ていうか、いつから私のことを……!?




そうこうしている間に、玄関の引き戸が開く音が。

蓮くんが帰ってきたんだ。

どうしよう……でも、ここで避けるのは違う気がする。


恥ずかしいけど、普通に!普通に、話しかけてみよう。



「お、おかえり!」

食堂から、首だけをひょっこりだして声をかける。

大きめのボストンバッグを肩から下げている蓮くんは、「ただいま」と言うだけですぐ通り過ぎてしまった。




え…………ちょ、蓮くん!?

こ、こういう時って。

自分で言うのもなんだけど、もっとドギマギして、お互いに気恥ずかしくなって、目を合わせることすら上手くできない!みたくなるものじゃ……!?