しばらく他愛もない話をして待っていると、花火の始まる時間になった。
露店の間に張り巡らされた電飾の灯りが消えて、辺りがふっと暗くなる。
「もうすぐだね」と近くに座っている人の声がきこえる。
人々のざわめき、真っ暗な空、真っ暗な水面。
この街の花火大会は、BGMとして夏にふさわしい曲が流れる。
それは今年もそうで、この夏一番のヒット曲となったアイドルグループの歌が流れ始めた。
『夏の恋人』って歌だったっけ。
せつないメロディーが、夏の雰囲気によく合う。
隣では、まっすぐに空を見つめる原くんの姿。
見ているだけでドキドキと心が高揚していくのが分かる。
私も真似をして、まっすぐに空を見上げる。
沈黙が少し続いて、夜空にひゅんっと光がかけ上がっていくのが見えた。
ひゅーんと音がする。
まるで、原くんにときめいている時の私の心臓の音みたい、なんて思った。

