だから今度は、私がきみを救う番



「はーい、では国語の授業を終わります。高屋(たかや)さん、号令お願い」


物思いにふけっている間に、あっという間に国語の時間を終わっていた。

私は真面目にノートをとっただけ。

原くんは身体を半分突っ伏したまんま。

利き手の方を向いてシャーペンを動かしているように見えたけど。

ふたりとも一言も発しないまま、三時間目の授業が終わる。



「きりーつ」



蚊の鳴くような声でつぶやいても、原くんの耳には届いている。

彼がけだるそうに立ち上がるのを見て、私は「れい」と言った。

原くんが金髪をぴょこんと跳ねさせながら、一礼する。



「二人とも、次は美術室だから。遅れないようにね」



あさがお五組の担任でもある山中先生にそう声をかけられ、私は無言で頷く。

原くんは「はーい」と小さく返事をしていた。



カバンから彫刻刀のセットを取り出し、美術室へと急ぐ。

グループを組まされる体育や調理実習と比べると、美術の時間は楽な方だ。

教室から出るとき、原くんはまだ自分の席に座ったままだった。