「結構あるよ、そういう家庭」
そう言った原くんの瞳が、氷のように冷たく見えたのは気のせいだろうか。
川から降りてくる風が、湿気を纏って絡みついてくる。
私の黒髪も、重く揺れる。
「さ、行こっか」
はっと顔を上げたら、原くんは『一年生の時と同じ原くん』に戻っていた。
私の手を握り、早足で歩いていく。
空はまた晴れて、夏の青と入道雲。
アスファルトはじりじりと焼けて、私たちに踏まれていく。
そこからファミレスに着くまでは無言で、しっかりと手を握ったままで。
猛暑の中でふたり、空気に溶けて消えてしまいそうだなんて、思った。

