「佐知さんやー、ちょいと来てくれ」 その時、おばあちゃんの声が聞こえた。 佐知さんとは私のお母さんの名前だ。 寝たきりになってからのおばあちゃんは痴呆が進み、私をお母さんだと思い込んでいる。 「はーい」 重い腰を上げ、玄関から入ってすぐのおばあちゃんの部屋へと急ぐ。 扉を開けると、おばあちゃんが介護ベッドの上で横になって手招きをしていた。