「いらっしゃい」
「おじゃまします……」
「どーぞ。上がって?」
お気に入りのミュールを脱いで家の中に上がり、それをそろえて並べる。
原くんのおうちの床は、ひんやりとして冷たかった。
玄関を上がって右側が居間になっているようだったけど、そっちには誰もいないようだった。
原くんのあとについて、左側に続く廊下を進む。
突き当たりにある階段を上がると、床板がギシギシと音を立てた。
原くんのおうちは少し古いようで、うちのおばあちゃんちと同じ匂いがした。
おばあちゃんと言っても、いっしょに住んでるおばあちゃんじゃない。
お母さんの方のおばあちゃんちだ。遠方だから、もう随分行っていないけど。
そのおばあちゃんも、お母さんの行方は知らないらしい。
階段を登って右側の部屋に案内されて、私は初めて『彼氏の部屋』に足を踏み入れた。

