唐突に会話に入ってきた、明るい声。

 クラスメイトの晋哉(しんや)くんは、愛嬌のある笑顔を浮かべながら、ちょうど空いていたわたしの隣の席に腰かけた。

 千尋は、慣れた様子で話を続ける。

「もうすぐ夏休みでしょ? せっかくだから、みんなでどこか行きたいよねーって」

「あぁ、なるほど」

 頷いた晋哉くんは、「そうだ」と、思い出したように言う。

「ぼくら、叔父さんの別荘に遊びに行く予定なんだけど、キミたちも一緒にどう?」

「別荘?」

 いたって普通の一般市民なわたしには、まるで縁のない単語だけど、相手は晋哉くん。

 彼は、お坊ちゃんなのだ。

 家族がかなりの資産家で、全国各地……いや、世界各地に別荘を持っていると、噂には聞いている。

「弘毅と龍真と約束してるんだ。予定合うならおいで。弥生(やよい)も誘おうか」

 わたし、千尋、弥生、弘毅くん、龍真くん、晋哉くん。
 入学後、初めて組んだ班のメンバーだ。

 それを機に、わたしは龍真くんたちと仲良くなった。

 単純に気が合うからなのか、上手いことバランスがとれているからなのか、よくわからないけれど、6人でいると居心地がよくて、数か月たった今でも度々一緒に行動している。


「行く行く! 絶対行く! ね、奈乃も行くでしょ?」

「うんっ」

「おっけー。じゃ、あとで詳細教えるね」


 別荘。

 みんなと、龍真くんとお泊り……

 そんなの、楽しくないわけがない。

 晋哉くんから教えてもらった旅行日を、すぐさまスマホのスケジュール帳に入れる。


 あと何日?

 うーん、結構ある。

 早く夏休みにならないかなぁ。


 窓の外から歓声が上がる。

 また1点、追加されたみたいだ――。