奈乃(なの)はいつになったら告白するの?」

 とある日のお昼休み。

 親友の千尋(ちひろ)は、机の上に広げていたお弁当箱を片づけながら、唐突に尋ねてきた。

「へ?」

「ヘ? じゃないでしょ」

 呆れ顔の彼女の視線は、窓の外へと向かう。

 つられて、わたしも外を見る。

 ここは、直近の席替えで手に入れた、窓側後ろから2番目というかなりいい場所。
 ちょっと横を向けば、広い校庭を見渡すことができる。

 少し前まで誰もいなかった校庭は、いつの間にか人で賑わっていた。

 その中には、サッカーをしている同じ学年の男子たちの姿も。

 ご飯食べたばかりなのに、よくそんなに動けるなぁ。
 お腹痛くならないんだろうか……

 わたしの心配をよそに、彼らは軽快に走り回っている。


「おっ!」

 千尋が、声を上げて身を乗り出す。

 直後、男子の1人がシュートを放つと、ボールはゴールキーパーの横をすり抜け、網の中に勢いよく収まっていった。

「いいぞー弘ちゃん!」

 その男子――弘毅(こうき)くんの活躍を、千尋は自分のことのように喜んでいる。

 弘毅くんは、わたしたちのクラスメイト。
 そして、千尋の幼なじみだ。

 性格をそのまま反映したような明るい髪色に加え、いつも制服を着崩していて目立つため、彼のことは遠くからでも容易に判別できてしまう。

 千尋と弘毅くんは家族みたいに仲がいい。

 知り合った当初は付き合ってるのかと思っていたけれど、当人たちいわく『そういうのじゃない』とのこと。


 得意げに笑った弘毅くんが、直前にパスを出した男子の元に駆け寄っていく。

 弘毅くんと龍真(りゅうま)くん、2人の間でハイタッチが交わされた。

 途端に、女子の黄色い声援がボリュームを増す。
 相変わらず、すごい人気だ。


 あ――