彼女のそれは、ふにっと、柔らかくて、

心地よくて、、だけと冷たくて



そして______どこか懐かしく感じた。




………。



…って、いやいや!!

感触味わってる場合じゃないや、



驚いてしばらくフリーズしてしまったけど、
慌てて彼女を引っ剥がす。




「ちょ、…急になに、」



彼女のグロスがついた唇を手の甲で拭いながら、睨みつけるけど、



『…あおくんずっと会いたかった。』



彼女は全く怯む様子もなく、にっこり笑いながら瞳を潤ませた。



藍「葵の知り合い?」

璃翔「え、元カノとか?」


2人の質問には全部首を横に振って返した。


うん。俺もぜんっぜん知らない人なのよね。



「ごめんね、失礼を承知で聞くんだけど、君誰かな?」



桃哉「え?葵くんの知り合いじゃないの?」


いや、俺にこんな美人の知り合い居ない、

ましてや俺のことを親しげに"あおくん"なんて呼ぶのは家族か親戚くらいだ。



『…覚えてないの…、?』



「覚えないって言うか…まじで君のこと知らないんだよな」


こんだけ記憶にないんだ、


「誰かと勘違いしてないですか?」


彼女の言うあおくんとやらはきっと別人に違いない。



『…勘違い、なんてするわけないでしょ、』


いやぁ、そう言われましても…、。



困っているとどこからか聞こえる誰かを呼ぶ声。


?「凛〜!!おーい凛!!」



その声に眉をしかめる彼女は呼ばれている"凛"って子本人なんだろう。


「行かなくていいの?」

『っ、』



何かを考えるそぶりを見せた彼女はたまたま通りかかったADさんからマジックを借りると、

ポケットから財布を取り出す。


そして、取り出したクレジットカードに11桁の数字を書いた。


『これ、必ず連絡して、ずっと待ってる』

急に押し付けられたそれを、思わず握ってしまって、



「え、は?おい、まてって!!」


彼女はそのまま振り返らずに走り去って行った。



萩斗「…え、あいつ、頭おかしいんじゃね、?」

桃哉「やばいよね、」




帰り際香った香り。

それは今朝、薄れてきた金木犀の匂いだった。

なぜだかそれがとても懐かしく感じる。



「…リン」

下の名前しか書いてねぇーじゃん。