エレベーターには、誰も載っていなくて、狭い空間が更に俺を緊張させた。
「及川さん。髪、乾かさなかったでしょう?」
風呂に入る前に、ホテルの外の土産物屋に走ったせいで、後半時間の配分が気になって仕方なかったから、ドライヤーも当てずに風呂から出たのだ。
「ちょっと、時間がなくなっちゃって。」
「風邪、ひいちゃうよ?」
珠利ちゃんが、自分のバスタオルで俺の頭を包んでくれた。
俺の肩くらいまでしかない珠利ちゃんの細い肩を両腕で囲えば、
『及川さん…』
ちいさく囁いてくれた。
そのまま、バスタオルの波の間で、キスをした。



