吐息すら凍てつく夜空に、畏怖の念を抱くほど美しく浮かぶ月の様な銀髪。夜が明け、無事に生きのびた事への感謝を何度も捧げた朝日と同じ緋色の瞳。

 つい何日か前まで数百人が住んでいた小さな村は、大量の火薬により硝煙が至る所で立ち昇る。
 一面焦土と化したこの戦場に立ち、いつ浴びたかもわからない返り血の饐えた匂いを身体中に纏いながら、正気を保つために何度も"加護の(ぎょく)"がついた組紐を指でなぞる。

 君は、もう忘れているだろうか。