「お疲れ」
ふと聞きなれない女の人の声が聞こえ、私ははっと顔を上げた。
スタジオの入り口に目をやると、扉からうちの高校の女子生徒が入ってくるのが見えた。
真っ黒なサラサラのロングヘアーと、猫のような大きくて印象的な瞳。
知っている。
この人は、打ち上げでアツキ先輩の向かいに座っていた、注文をとってくれた女子。
確か、山田ミカ先輩だ。
「おー、お疲れ! 花音ちゃん、紹介するよ。
この人は山田ミカ。うちの高校の三年で、アッくんと俺とは幼なじみなんだ。
ついでに言うとアッくんとミカは家がお隣さん同士」
ノゾムくんがそう紹介すると、彼女はペコリとお辞儀をした。
目つきが鋭いせいか、睨まれているような気がしなくもない。
美羽が『怖い』と言っていたのを思い出して、私の身体はガチガチに固まってしまった。

