「本当だぁ、すごい! 知らなかったぁ。
昔ね、おじいちゃんにちょこっとだけ教えてもらったことあるんだけど、私全然覚えられなくて。
お姉ちゃんはちょっとは弾けるんだけど」
「おじいさん?」
「あれ? 言ってなかったかな? うちのおじいちゃん、ベーシストだったの。
もう亡くなっちゃったんだけどね。
あ、でも昔の話だから、名前とか言っても分からないと思う」
そういえば、ノゾムくんにおじいちゃんの話をするのは初めてのような気がする。
おじいちゃんがベーシストだったおかげで、文化祭でベースを食い入るように観たのかもしれない。
でもそのせいだけじゃないと、今目の前で笑うきみを見て、きみの音を聞いて、はっきりと確信した。
ノゾムくんだから、目を離せなくなった。
ノゾムくんが鳴らす音だから、私は心を奪われたのだ。

