「そうだ! 花音ちゃん、俺たちの練習見に来ない?」

「え?」

「駅前のスタジオでこれから練習するんだ。

クリスマスライブの練習してるんだけど、みんな全っ然出来てなくてさ。毎日ヒーヒー言ってるんだよ。

俺たちも花音ちゃんも、きっとそんなに変わらない。

聞いてたら、きっと自信つくと思うよ。うん、そうしよう! それがいい!」



イルミネーションが青から緑へと変わる。

それが三十秒ほど続いて、今度はピンク色へと変わった。

まるでぐるぐる回りながら変化する、私の気持ちみたいだ、なんて思う。



うん、って返事をする前に、ノゾムくんに手を引っ張られていた。

待ってと言う暇もなく、彼は私を連れて走りはじめる。



綺麗に光るイルミネーションも、夜景へと変わっていく街の風景も、散りはじめた紅葉たちも。

ノゾムくんの前ではやっぱりただの背景になって、ぼんやりと滲んでいった。



私はもう泣いていなかった。

上昇気流に乗ったように、心が踊り始めるのを感じていた。