テンションが上がった様子の美羽の言葉を聞いて、
直ちゃんが「じゃ、四人で行こっか」と提案した。
バンドのライブなんて観にいくのは初めてで、なんだか緊張するな、と私は思った。
派手で、目立ってて、きらびやかで、私とは違う次元にいる人たちのような気さえしてくる。
文化祭のテーマソングを歌う人たちだなんて、なんかよく分からないけど、きっとすごい人たちなんだろう。
ドジばかりの私とは、違う場所にいる人たちだ。
南高校という同じ空間にいることさえ、なんだか申し訳ないような気持ちになる。
「でもこの曲作ってるのは、メンバーのノゾムくんだよね?」
アヤがそう言うと、直ちゃんはこくりと頷いた。
ノゾムくん。誰だろう。
直ちゃんの彼氏のショウくんはよく話に聞いてるし、ドラムのアイトくんは一年生の時同じクラスだった。
ボーカルのアツキ先輩は、良い意味で有名人だから知ってる。
去年のバレンタインには、チョコレートを三十六個貰ったらしい。
「ノゾム、私去年同じクラスだったよ。優しいイイやつだけど、普通すぎるんだよね。へえ、そんな才能あったんだ」
美羽がそう言って、驚いた様子を見せた。
直ちゃんも「意外だよね」とつぶやく。

