薄暗く、冷たい体育館の床。
靴を脱いで足をおろすと、ひんやりと寒さがかけ上がってくる。
あの日超満員となったここで、彼らの歌を聞いたのがまるで夢のようだ。
高校の体育館とは思えない光景と、季節にそぐわない熱気だった。
本当に私が、彼らの手伝いなど出来るのだろうか。
今だってこんなに人に迷惑をかけているのに、人の心を掴む彼らの音楽を、台無しにしちゃうんじゃないだろうか。
そんなことを、ぐるぐると考える。
体育倉庫の方に近づくと、中から女子生徒の話し声が聞こえた。
きっと段ボールを片付けている美化委員の子たちだろう。
この人たちにも謝った方がいいのかな。
そう考えて中に入れずにいると、予想外の言葉が耳に届いた。
「あの遅れてきた二年生さあ」
「天然ノンちゃんって言われてる子でしょ?」
どくん、と胸の奥がざわつく。
私のことを話している、とすぐに分かった。
それも、なんか良くない時のそれだと直感で分かる。

