「ありがと。ひとりで観に行くの、なんだか緊張しちゃって」
「何ー? 直子の彼氏のバンド? 私も行きたい!
体育館で練習してるのちょこっと見たけど、カッコよかったよ! 特にドラムの子、イケメンだよね!」
そばで段ボールに線を引いていたアヤが、顔を上げてそう言った。
最近付き合っていた彼を振ったばかりだというアヤは、次の恋に向けて目を光らせているのだろう。
その隣でスマホを弄っていた美羽も、身を乗り出して会話に混ざる。
「知ってる! アツキ先輩がボーカルなんだよね! ちょーカッコ良くない!?
ほら、このテーマソング歌ってるのもそうでしょ?
イケボすぎるし、こんなの惚れちゃうよね~! もちろん私も行く!」

