カラオケの敷地を出て、角を曲がる。
歩行者だけが通行できる長い長い階段へと道は折れて、私は手すりを掴んだ。
ひんやりと冬の温度が伝わってくる。
息を吐くと、白い気体となって空へと舞い上がった。
「綺麗……」
何百段もあるコンクリートの階段のそのてっぺん。
坂の街の中腹にあるこの場所から見下ろした景色は、宝石のようにきらきらと光っていた。
明かりがともった遠くの家々では、それぞれがそれぞれの生活を送っているのだろう。
もしかしたら、ロックンロールを聴いている人もいるかもしれない。
恋をしてる人もいるかもしれない。
景色を見てぼーっとしている私みたいな人もいるかもしれない。

