「直子と一緒に、バンドの打ち上げ行くよ! 六時半から、そこのカラオケ」
「え!? アツキ先輩もいる!?」
「もちろんいるっしょ! 他のバンドの子たちもいるってさ。それから直子情報によると、アツキ先輩彼女いないらしいって!」
「マジで!? ちょ、どうしよ! ねえ、アヤ、ノン! 私服に着替えよう!?」
「私はアイトくん狙いだから、ジャマしないでよ! よし、着替えていこう! ノン、家近所だよね!?」
何が起きたのか、展開の速さについていけなかった。
私がぼけっとしている間に、アヤは直ちゃんに高速タッピングで返事をして、次々と情報を得ていた。
打ち上げにはブラックコーヒーのメンバーが全員来るということ、ショウくん以外は彼女はいないということ。
一年生や三年生の他のバンドの子たちも来るということ。
カラオケの二時間ソフトドリンク飲み放題コースで、卒業生である先輩たちが保護者がわりに同伴してくれるということ。
女子が他にも来るということ。
情報量が多すぎて、ライブの余韻が醒めない私の頭は混乱するばかりだ。
「よっしゃ、彼氏作るぞー!」
アヤの声が、夕焼けの空に響いた。
坂の中腹から見下ろした街は、冷気を含んで綺麗な光を放っていた。
私はまだ、ライブの熱気と高揚感に包まれたままだった。

