「その卒業ライブなんだけど、今回も四人で行く?」
お弁当の蓋を閉めた直ちゃんが、みんなに問いかける。
アヤと美羽は、「うん!」「もちろん!」と続けて返事をした。
「ノンは?」
直ちゃんに聞かれて、一瞬体が固まる。
三月十二日。
駅のそばにあるライブハウスで行われる『卒業ライブ』には五組のバンドが出場し、どのバンドもメンバーに高校三年生が含まれている。
彼らの卒業を祝うためのライブだ。
『卒業ライブ』の言葉に、心が跳ねる。
それは緊張でもあり、ノゾムくんの不在を悲しむものでもあった。
「あー、私は……。ノゾムくんとふたりで行こうと思って」
深呼吸をしてから、そう伝える。
直ちゃんは私の気持ちを察したようで、「そっか、出られないもんね」と小さく呟いた。
「うん。でも今月中には退院出来るし。ノゾムくんが楽しみにしてたライブだから、隣でいっしょに見ていたいなって思ってね」
少し静まった空気を元に戻そうと、私は気丈に振る舞う。
実際彼はもう前を向いているし、いつまでも悲しんでいられないのだ。
「ひゃー! ラブラブぅ!」
アヤが茶化すので、私は「もう」とアヤの頬をつねった。
珍しい私の反撃に、四人で爆笑する。
こんな風に笑いながらこの教室でご飯を食べるのも、あと一カ月ほどだ。
そう思うと、なんだかせつない気持ちがこみ上げてくる。

