ミカ先輩は照れをごまかすかのように、楽器ケースからベースを取り出した。
私が貸した、おじいちゃんのベースのうちの一本だ。
先輩は真っ赤になった指で、一番太い弦を押さえる。
「恋話ってキャラじゃないから、ここだけの話ね」
そう言って先輩は、『群青、僕ら』の最初のフレーズを掻き鳴らした。
文化祭で私が初めて聞いた、せつないメロディー。
青春をうたった歌なのに、恋をしている私の心にすっと沁みる曲。
私はそれを聴きながら、ルーズリーフに書いた文字たちをスマホのカメラにおさめた。
ラインのメッセージ画面を開き、ノゾムくんに、それからブラックコーヒーのメンバーとのグループトークに送信する。
これを見たら、きみはどんな顔をするのかな。
きみはどんな反応をするのかな。
それがちょっぴり楽しみで、どきどきして、怖くって、
色んな感情でいっぱいになるよ。
上昇する心拍数と重ねるように、ミカ先輩の奏でるベースの音に耳を傾けていた。

