「ノンちゃん、歌詞見せてよ」



「恥ずかしいけど、……どうぞ」



鞄からルーズリーフを取り出し、ミカ先輩にそっと手渡す。



想像しやすいように、私はスマホに送られてきた新曲の音源を流した。

これは、ノゾムくんがアプリを使って音を入れたものだ。



実際のバンド演奏と比較すると、ずいぶん機械的に聴こえるけれど。



ギターの音、ドラムの音、それから唸るようなベースの重低音。

ヴォーカルの音に合わせて入れたキーボードのリズムに乗せて、ミカ先輩が鼻唄を歌う。



彼女の頭の中では、私の書いた歌詞が踊っているのだろう。

なんだかむず痒くてしょうがないけれど、私はそれをじっと見つめた。



「ノンちゃん、これすごくいいよ!」



三つの楽器の音で曲が締め括られると同時に、ミカ先輩が歓声をあげた。

しっかりとルーズリーフを掴み、目をきらきらさせて字を追っている。

安心感と同時に、嬉しさがどっと押し寄せてくる。