Hello,僕の初恋


ライブ会場となった第一体育館の中に椅子はなく、立ち見で鑑賞する本格的な形式だった。

これがいけなかった。



開始五分前、「アツキ先輩のライブ始まるよ~!」と誰かが叫んだのをきっかけに、彼のファンであろう女の子たちが雪崩のように押し寄せてきたのだ。



入口はステージに向かって右側にあり、そのせいで、会場の右側にいた私は中央へと押し流された。

まるでバーゲンセールの争いのようだった。



アツキ先輩がこれを見ていたなら、どんなに美人な女の子が相手でもドン引きしてしまうのではないかと思うほどに酷い光景だった。



数秒の間に直ちゃんとアヤの頭は見えなくなり、身長一五〇センチの私は人の波に埋まってしまった。

頭と足が違う位置にあったと思う。

都会の通勤電車ってきっとこんな感じなんだろうなと思いながら、意識が遠のきそうになった。