悲しいことがあった。
でも楽しいこともあった。
きみは今悲しみのどん底で、そこでもがいてもがいて、苦しんでいるんだろう。
私には特技なんてないし、何もしてあげられることなんてないな。
そう思ったけどね。でもそうじゃないって、今度は自分で気づくことが出来たんだ。
そばにいてあげられる。
支えてあげられる。
それから。
私にしかしてあげられないことがある。
家に帰った私は、紙とペンを持っておじいちゃんの音楽部屋に閉じこもった。
溢れ出る感情を殴り書いて、手が真っ黒になるまで書いて、書いて書いて書いた。
それから、もうひとつ。
「お姉ちゃん、お願いがあるの」
お姉ちゃんの部屋を訪れた私は、彼女にそう伝えていた。
お姉ちゃんは私の目を見て、ふっと笑って頷いて。
私だけがしてあげられることが、きっとある。
そう信じて、私は顔を上げた。

