「……花音ちゃんにまた歌詞を頼もうと思ってたのに、練習出来ねえじゃんな」
「わぁああん、ノゾムくん……っ」
私はノゾムくんに抱きつくと、子どものように声をあげて泣いた。
自分が子どもみたいなのに、子どもをあやすようにしてノゾムくんの肩をぽんぽんと叩く。
「どうして花音ちゃんが泣くの」
耳元から、涙声の彼の声と、ずずっと鼻をすする音が聞こえた。
きっと、彼も泣いている。
でもその顔を見る勇気がなくって、私は彼に抱きついたままおんおんと泣いた。
ノゾムくんの震える手が、私の背に回る。
彼の身体は震えていた。
しばらくそうしていたと思う。
何分間そうしていたか分からない。
私たちはただ抱きしめ合ったまま泣いた。
泣いて泣いて、涙が枯れるまで泣いて、そのうちおかしくなって互いに笑った。
「花音ちゃん、ありがとう」
そう言って顔をあげた彼の顔は赤くって、目も赤くって、涙でぐちゃぐちゃだったんだけど。
私もきっと涙でぐちゃぐちゃだから、見られたくなくって、両手で顔を覆った。
ショウくんと本物のお姉さんが迎えに来るまでの間、私たちはそうしてひたすら笑っていた。

