「三月の半ばにさ、アッくんの卒業ライブするんだよ」
病室の中はしん、と静まり返っていて、世界中の音をぜんぶ消してしまったのかな、と思った。
窓の向こうから光が射す。
ノゾムくんの茶色い髪を照らして、きらきらと光らせた。
「治るのに三カ月はかかるって。無理したらベース弾けなくなっちゃうから、今は何もするなって」
ノゾムくんの声が、どんどん小さくなる。
私は私で、ぽろぽろと流れる涙を止めることが出来ない。
今、きみが悲しみの底にいるのに。
何もしてあげることが出来ないのが、こんなにも悲しい。
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