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隣の市にある県立病院までは、少し遠い。
電車とバスを乗り継いでいくものかと思っていたら、駅前のロータリーまで来たところで、ショウくんがサッと右手を挙げた。
少し先にいた黒い軽自動車が、私たちの横に近づいてくる。
そして窓が開いて、運転席の女の人に「こんにちは」と声をかけられた。
大学生くらいだろうか。
胸元まで伸びたウェーブの髪の、先っちょだけがピンク色に染まっている。
優しい目をしたお姉さんは「さぁ乗って乗って」と言って、後方のドアを自動で開けてくれた。
「お願いしまーす!」
ショウくんがそう言って乗り込むので、私もぺこりとお辞儀をして、助手席の後ろの席に座った。
ドアが閉まると同時に、車が走り始める。
タクシー……ではなさそうだ。
「あ、こっち、本物の姉ちゃん。ノゾムの」
「え!?」
国道まで出たところで、ショウくんが思い出したかのように彼女を紹介する。
いきなりノゾムくんのご家族と対面した私は、慌てふためいて、助手席の椅子に額をぶつけた。
「は、初めまして……! 平花音です」
「ふふ、可愛い。この子がねぇ~。あ、私はノゾムの姉のミツキです。よろしくね」
お姉さんは前を向いて運転しながら、自己紹介をした。
よく見ると、ノゾムくんに似ている。
姉弟なんだから当たり前なんだけど。
幅広の緩やかな二重まぶた、色白なところ、耳の形、薄い唇。
観察すればするほどそっくりに思えてきて、ちょっと面白かった。
「今日は私は車で待ってるからさ。ノゾムと話しておいで」
「はい。ありがとうございます」

