ひとしきり説明した後で、手摺りに額をこすりつけるようにして下を向いた。



顔を上げればそこには冬に彩られた美しい夜景が見えるというのに、私はそれをしない。

ただ手摺りに突っ伏せて、はあっと溜息をついた。



「……ノンはどうして逃げ出したの?」



直ちゃんが、少し強い口調でそう言う。

先生やお母さんに質問された気分になって、私は小さく答えた。



「……自信がないんだと思う。彼の横に立つ自信が」

「じゃあ、好きなんだ?」

「……うん」



自信のなさを表すように、さらに声を小さくして言う。



山の上の展望台から見たら、私はきっと夜景の中の小さな粒。

今日ステージから見下ろした光景みたいに、誰が誰だか分からないんだろう。

そんな、ちっぽけな存在の私。