「打ち上げ楽しめた?」
「うん。ミカ先輩が色々してくれたみたいで。何も手伝えなくてごめんね」
「ううん。いいんだよ。ミカはいつも色々してくれるから、俺たちも頼っちゃって」
ミカ先輩の話が出て、私は彼女の進路のことを思い出した。
留学するって言っていたっけ。
「……ミカ先輩、ロンドンの大学に進むんでしょう?」
「うん。……アッくんも東京行っちゃうし」
「ブラックコーヒーは、どうなっちゃうの?」
私が聞くと、ノゾムくんは一瞬寂しそうな顔をして、それから真っ直ぐ前を向いた。
迷いのない、透明な瞳だ。
彼のゆるいくせっ毛が揺れて、イルミネーションの色に染まる。
「俺たちさ、メジャーデビュー目指してんだ。
いつかデビューして、全国の箱回って、それでさ、そのうち武道館とかでライブするようになるの。
それが、俺の夢」
イルミネーションが青に変わる。
ノゾムくんは照れもせず、真っ直ぐに前だけを見て、大きな夢を語った。
想像してみる。
知らない街のライブハウスを回る彼ら、大きな会場で演奏している彼ら、ラジオをつけた時に流れ始める彼らの音楽。
夢物語みたいに聞こえるけれど、彼らなら本当に成し遂げてしまえそうだと、胸が高鳴るのが分かった。

