「えっと……お誕生日、おめでとう」
沈黙に耐えかねて、私からそう切り出す。
「ありがとう」
「ごめんね。何も用意出来なくって。プレゼントとか……」
「ううん、いいんだよ! 花音ちゃんと話せるだけで、じゅうぶん」
そんなことを言われたら、なんて返せばいいか分からなかった。
鼻の先が冷たくて、凍えてしまいそうになる。
でも目の前のイルミネーションがあまりにも綺麗だから、寒いのはどうでも良くなった。
「花音ちゃんに話しかけるタイミングつかめなかったから……。あー、帰っちゃうって思って。気づいたら追いかけてた」
ノゾム君が、白い息を吐きながら言う。
「文化祭の時も、後ろから声かけられたね」
「うん。あの時さ、声かけるかめちゃくちゃ迷ったんだ。緊張してて。
……でも声をかけて良かった。歌詞を引き受けてくれて本当にありがとう」
「こちらこそ、私なんかに頼んでくれてありがとう」
お礼を言い合うと、なんだか照れくさくなって笑った。
私が先に笑って、ノゾムくんが続けて笑う。
ふたりが笑う度に白い息が舞うので、おかしくなってもっと笑った。

