会場に入ると、一列目の中央付近の席に直ちゃんが座っているのが見えた。
彼女が荷物を置いて確保してくれていた席に、右から直ちゃん、美羽、アヤと腰をかけていったので、私はアヤの左隣に座った。
私をベースの立ち位置の近くにしてくれたんだろうなと、直感で分かる。
「隣、いい?」
聞きなれた声に顔を上げると、そこにいたのは山田ミカ先輩だった。
ミカ先輩が直ちゃんたちにお辞儀をすると、美羽は少し驚いたような顔をして、倍速でお辞儀を繰り返した。
「ミカ先輩! どうぞどうぞ。っていうか、先輩キーボードで参加するんじゃなかったんですか?」
「するよ。一曲だけだから、順番が来たら上がるよ。
あとはここで見とこうと思って。前からしっかり見ると、研究にもなるしね」
「先輩はすっかりブラックコーヒーの一員ですね」
私がそう返すと、ミカ先輩は「サポートメンバーだけどね」と笑った。
会場には、続々と人が入ってくる。
高校生のバンドが中心だからか、高校生くらいのお客さんが多いな、と感じた。
男の子も女の子もみんな着飾って、キラキラしている。
この中で自分が一番目立たなく感じるけれど、そんなことを考えてる場合ではない。
これから私の歌詞が披露されるのだ。

