十二月二十五日、ライブの本番の日は朝から雪がちらついていた。

この地域でクリスマスに雪が降るのは、実に数年ぶりのことらしい。



ライブの開演は午後四時。

三時過ぎに直ちゃんたちと待ち合わせをしている私は、姉の部屋で身支度にいそしんでいた。





「お姉ちゃん、この服変じゃない?」

「変じゃないけど、あんたが着るとなーんかヨレっとしてんのよね。ほら、こうして」



先週の日曜日に、美羽が一緒に選んでくれたワンピースを着て、鏡の前に立つ。

お姉ちゃんは私の服の裾を丁寧に広げて、変なところがないか細かくチェックしてくれた。



「あんたさー、今日ライブ行くんでしょ? 例のベースの彼?」

「もう! お姉ちゃん!」




鏡に映った自分の顔が、真っ赤に染まっているのが分かる。



自分の中でなんとなく確信に変わり始めているこの気持ち。

きっと、今日のライブを聞いたら真実になってしまうんだろうな、と思った。



たぶん、私はこの気持ちを認めてしまうのが怖いんだと思う。

ドジで泣き虫で怖がりな自分は、素敵な彼の隣に並ぶのに相応しくない。

場違いも甚だしいと思う。



そう思うからこそ、気持ちの答え合わせが出来ないまま。

それなのにこうして着飾って、何かを期待している自分もいるのだ。