「ベースかぁ。そういえばね、うちのおじいちゃん昔音楽活動しててね、ベースを弾いてたの! うちに楽器がいっぱいあるんだよ」
ベース、という言葉を聞いて、私はおじいちゃんとの日々を思い出した。
同居してた祖父は三年前に他界したのだが、それはそれは素晴らしい演奏を聴かせてくれたものだった。
立派なベーシストだった。
「ノンには男の子よりおじいちゃんかぁ」
美羽がからかうようにそう言ったが、その言葉の半分は耳に届く前に消えてしまった。
おじいちゃんのことを思い出した私は、とてもせつない気持ちになってしまったからだ。
「私は不器用だから弾けないけど、すごいのいっぱい聴いたんだぁ。……うっ、おじいちゃん……」
「ほらほら、そんなんじゃおじいちゃん悲しんじゃうよ?」
「だってぇ」
直ちゃんが私の肩をぽんと叩いて慰めてくれる。
それが嬉しくて、私はおんおんと声をあげて泣いた。
「アヤがノンちゃん泣かしたの~?」と誰かが叫んで、アヤが「ちげーし!」と反撃する。
教室にはまた人だかりが出来てしまった。

