棺の中のミヨ子がのそりと体を起こしたのだ。
彼女は滂沱の涙を流しながら、鼻をすすっている。
そんな彼女のそばに歩いていったジュリエラレッタは、肩を抱き、慰めていた。
それは先ほど足を踏まれた痛みを忘れてしまうほどの衝撃的な光景だった。
「お、まえ……死んだんじゃ」
「ご覧の通り、生きてるわよー。ねー?」
ジュリエラレッタは悪だくみが成功したかのように笑う。
「こんなに肌が青白いのは白粉をたーっくさんつけたからよ!」
ロミオンは今までにないほど焦りを感じていた。
ミヨ子とジュリエラレッタが親しい間柄であるということは──。
「ロ、ロミオン様ああ! ……ぐすんっ……あなた……わたしを……ずっとだ、騙してたんですか!?」
「え、えーっと。な、なにが……」
ミヨ子の心からの叫びにロミオンは顔を笑顔のまま硬直させる。
落ち着きなく視線を右往左往させた。
「私だけだって……わ、私のこと愛してるって……ぐすっ……言ってくれたじゃないですかっ」
「そ、そうだったかなー。あー、思い出せない……こともあるかもしれないし、ないかもしれないかもしれない」
滅茶苦茶な言葉を吐き、誤魔化しを図ろうと画策するロミオン。
右手を頭の後ろにまわし、視線を背けた。
そんな男をジュリエラレッタはキリリと睨んだ。
「……あんたみたいな優柔不断な男って、結局最後には切られるのよねー」
ジュリエラレッタは平坦な声色で続ける。