「へーそうなの。……私はロミオンにとって特別な存在?」

「ああ! 勿論だとも!」

「私のことが唯一無二?」

「僕には君だけだ! 君がいれば……他の何もいらない」

 ロミオンがそう口にした途端、ジュリエラレッタは満面の笑みを浮かべた。

 それと同時に、しらっとポケットから出したハンカチでロミオンの唇が触れた箇所を拭う。

 いつもなら可愛らしいと思うジュリエラレッタの笑顔も、霊廟の前では何故かそこはかとなく恐ろしいものに感じていたロミオン。
 知らぬ間に手に汗をかいており、口はからからに乾き始める。



(あれ? ぼ、僕なにか選択肢間違った?)


 ロミオンはぎこちなく口元に笑みを貼り付ける。
 すると、ジュリエラレッタがいきなり拍手をし始めた。

「な、なんだ!?」

「おめでとー!! ……はーい、もう起きていいよー」
 突然大きな声で叫び始めたジュリエラレッタにロミオンは目を白黒させる。

「……ん、ん? い、いきなりどうしたんだ」

「うっさい、あんたには言ってないわよ。ちょっとは黙ってなさいよ」

 そう言ってジュリエラレッタはロミオンの足を力強く踏んだ。
 革でできたロミオンの靴とは違い、木で作られたジュリエラレッタの靴は硬い。
 ロミオンは声なき悲鳴をあげる。

「ほら。おきなさいよ、ミヨ子!」

「……ぐすんっ……だ、だって…………」

 ロミオンは驚愕の表情を浮かべた。