旅立ち


「あ、うん……」

面をつけはじめるテルに、キギがどこか残念そうな視線を向けた。
なんだ、と、首をかしげて態度で示してみる。

「あ、いや、もったいないなって」

「もったいない?」

「……つやつやの、チーズみたいで」

「チーズが食べたいのか」

「じゃなくて……」

ごにょ、と口ごもってしまったので、追及をあきらめて、自分の服を整えることにした。少しきつめの腰紐がついていたせいで、寝るときに緩めていたのだ。

「あ、そうだ、運んでくれて、ありがとうございました。宿代は、今すぐには無理だけど……」

ほっとしたような声で、キギが頭をさげる。
マントを着直しながら、別にいい、と言った。


そういえば、あの大男は、どうしているだろうか。
昨日は眠くて連絡なんて頭から抜けきっていたが、よく考えたら、あれから、連絡していないし、会ってもいない。

キギが、寝る前に付けていた面(外して、ランプのそばに置いていた)を手に取る。
私も付けたほうがいいってことなのかな、みたいなことをぶつぶつと考え込み始めた。