旅立ち


「……って、うあ!? なんだ、その…………きょろんちゃんはまさか」

「はい、今朝お会いしました」

キギです。

「う……うん。可愛いい、が。これはこれで、何か、違う感情? が沸くというか……?」

なぜか疑問系な語尾。
そして違う感情ってなんだ!
問いただしたいが、テルは、キギに目を合わせようとしない。
なんだか肩が少し震えている。
笑ってる、絶対笑ってるよ。


「あーああああなた、わ、笑っ」

「笑ってないぞっ!」

……しかし声が震えている。

「じゃあ泣いて……」

「泣いてない……で、なぜ、この面を?」

会話を反らしたテルが、同じく真顔を崩さない木顔で、ソノさんを見上げた。
二人がどんな仲なのかはわからないが、少なくとも、信頼関係くらいはあるのだろう。少し羨ましい。

それと、本当に、この人たちは、どうして顔を見せてくれないのだろう、と今さらのように思った。





「……やっぱり、可愛さ重視ってやつだな」

「可愛さ……」

ソノさんは、話を合わせながら、軽く台車を引いてタイヤの調子か何かを見ているのか、ゆっくり転がすように動かしたり、戻って止まったりしている。


いつ進むのかと思ったが、長いことそのままだった。適当に会話をするうちに、町は夜になり、いつの間にか、すっかり人影が消えていた。