旅立ち

(それに、ついうっかり、あり得ないような値段のものを選んでしまう可能性があるのが怖かった)


彼は本当に、入ってすぐ、ずばっと決めてしまった。決断力が羨ましい。
色はベージュじみた感じ。素材は……よくわからないが、まあまあ軽くて、通気性は良さそうだ。
日焼け止めの薬を塗る範囲が狭まるなあ。
あっ、待てよ、今日多分、塗っちゃったわ。やばい、汗がこもって落ちてくるのかな……
あれは、目に染みると、結構痛い。

――――とにかく、こんなやつが突然、夜中にこちらに歩いてきたら、それはそれで、不気味この上ないという面ではある。
あ、でも、想像すると、ちょっとだけ楽しそう。
良い子に風船配っちゃったりして。

店内はというと、思っていたよりはすっきりしていて、しかしやはり、なんだか異様だった。

異様じゃない点は、店員さんが、お面を付けていなかった(黒髪の、可愛らしいおかっぱ頭のお姉さんで、推定23歳くらい)ことかもしれない。