旅立ち

買い物を終えて、店を出ると、少し寒かった。

「あの、ありがとうございます」

数分後、小柄な、まんまるおめめの《ぽかーん》顔が、真顔を崩さぬ微妙な木彫り顔の方を向いて話しかけるという光景が、出来上がっていた。

「ああ、いい。似合うぞ。つけ心地はどうだ。ずれたりしないか」

「はい、大丈夫だと、思います」


いくらか試着させてもらった後に買ってもらったお面は、なんというか――とても、一言では表現し難いものだった。

形は顔に沿っているし、ぴったりで、文句なし。
面に関しては、間の抜けた顔の、まんまる目玉のついたものだ。

口は、思わず拳をつっこみたいような具合に、ぽかんと開いている。生きていたらよだれが出で来そう。

これが一番可愛らしいから、似合うから、と言われたが、ばかにされているわけじゃないよね、そうなんだよね、と、何回も心で唸ってしまった。うーむ。

店員のお姉さんも、あら素敵! お嬢ちゃんにぴったりよ。そっくりで可愛いわなんて優しく誉めてくださった。
……微妙に複雑だった。
私は普段、こんなに、ぽかんとしてるのか。

ちなみにだが、自分で決めるから!
と主導権を握ってまで欲しいものがあるわけじゃなかったし、ソノさんがどういうものを合わせてくれるのかに興味もあったので、一切をおまかせしていた。