ちなみに、髪を切った刀は、箱の中(どれだったかは忘れた)に仕舞われていた。
「……ははは。うまく潜り込んでいたな。優秀な部下がいなければ、うっかりこのまま、貴重な商品を手渡してしまうところだったよ」
「あら、バレていましたか」
テルが悪びれずに言う。
声音から判断する限りでは、少し不機嫌ぎみだ。
キギは、商品扱いされたのが自分なのだとは、一瞬、気付かなかった。
「…………えっ……ああ!? しょーひんってなんだよっ!」
昔、何か子役をさせられた舞台上で、突然台本のセリフを忘れたときみたいに硬直し、1テンポほど遅れてからきゃいきゃい吠える。しかし、もう誰も構ってくれなかった。
すでに、一人は車の角度を上げて《さあ、いつでも走れますぜ》体勢を作ろうとしているし、もう一人はこれがいいかあれがいいかと、ふところをがさがさしている。
武器を探しているのだろうか。というか本当に何を入れてるんだ。



