旅立ち

「保管……いや、あ、ああ」
またしても、頷いてもらったのは隣の人物(……と表現するのが、そろそろ少し面倒になってきた。名前を聞いてもいいものなんだろうか)だ。

にしても、よくあるような無いような。でも、なんだかどこかで聞いたような話だ。
自分に起こるとは思いもよらなかったが。

「それで、あなたがたは、私の迎えに、ということ……」

「ああ」

「…………えっと、それで、その、相手が」

「…………」

黙られてしまった。
えっと、待って、どうしよう。

照れているのか、嫌がっているのか、絶望しているのかは、どうも面のせいで、わからない。痒くならないのかな。

とりあえずなんとか話を繋いでみることにした。

「……ほっ、本来なら、その相手本人が刃を持つとされていて、ただし、代理を立てる場合もあったような気がするけど……」

「代理じゃ、ない」

即答されてしまった。

……こちらとしてはどういう反応をすべきだろうか。不自然に目をおよがせていると、いつの間にか車が止まっていた。

景色はひたすらの林。
まだ、全く、ふもととは言えない。
町に降りるのだろうと漠然と考えていたが、違うんだろうか。

(……いや、待てよ)

耳をすますと、ようやく、そのわけがわかった。