ピンポーン、チャイムを鳴らすと同時パタパタと奥から出て来た。

「「よっ」」

と、いつもの挨拶を交わして家の中に入る。

「…え?」

瞳をぱちくりさせ何か言いたそうな芽衣が俺らを見てる。

「ケーキ買って来たよ」

「いつもんとこ売り切れでさ、遠くまで行っちゃったわ!」

「あー、うん。ありがとう…」

大きな箱に入ったケーキを手渡した。
それでもどこか解せない表情。

「芽衣、どした?」

「もう来ないかと思ってたから」

「なんで?」

「なんでって…」

「「クリスマスここに来ない時なんてあった?」」

声を揃えるつもりなんてなかったけど、自然と揃っちゃうんだなやっぱり。

ぱちぱちっと瞬きをして、静かに芽衣が笑った。

「そうだね」 

だから微笑み返した。俺も、奏志も。

今夜はクリスマス、雪は降らないけどクリスマス。

「子供シャンパンあるよ!」

「芽衣買ったの?」

「ううん、お兄ちゃんからのプレゼント!」

「「やっすいな!」」

せーのっでテーブルの上に置いたケーキの箱を開けた。いつもと雰囲気の違うケーキに芽衣が首をひねる。

「…ねぇ、サンタさん2コ乗ってるんだけど」

「間違えたんじゃね?」

「得したじゃん!」

2体の砂糖で作られたサンタがケーキの上、ちょこんっと並んで乗っている。

「切り分けようぜ!」

奏志がケーキナイフを持って、意気揚々とナイフを掲げた。

「なんかこのサンタさん…」

「「なに?」」

「2人みたいだね!」

まぁ、よく似てるとかおんなじだとか言われるけど。

「あ、でもこっちが大志でこっちが奏志かな」

「「どっちも変わんねぇじゃん」」

芽衣が砂糖のサンタをひとつずつ俺と奏志の皿の上に乗せた。

「そんなことないよ、似てるけど違うよ。2人だってそうじゃん。奏志のがスポーツができたり、大志のがちょっと背が高かったり」

「「!?」」

「ほらー!俺のが高いじゃん!」

「違ぇよ!あれはお前が髪盛ってるからだよ!!」

「いーやっ、違うね!俺のがにーちゃんだからな!」

「は、微塵も思ったことねぇけどな!」

「「つーかお前が…っ」」

はたっと奏志と2人、芽衣の方を見た。
珍しくツッコんで来ないなと思って。

「なんかいつも通りだね」

芽衣が笑った。
確かに、これがいつも通り。
俺らの間にいるのは芽衣が1番しっくり来る。

「…食うか、ケーキ」 

「奏志早く切って」

「私このチョコレートのとこ欲しい!」

奏志とはだいたい考えることが一緒。

時折ずれることがあっても、思うことは一緒だ。


“ヒロインにもなれないじゃないですか!!”


「まぁ“俺らの”ぐらいにならしてやってもいいよ、そんな柄じゃねぇけど」

奏志が切り分けた1ピースのケーキを芽衣に渡す。 

「え、なにが?」

「そうだな、他にいないしね」 

欲しがったMerry Christmasと書かれたホワイトチョコレートをそのケーキの上に乗せてあげた。 

「え、何?何の話??2人だけで会話しないでよ!」




Happy Merry Christmas!!!