「芽衣、芽衣っ!」

部屋を覗きに来たお兄ちゃんの呼ぶ声で目が覚めた。

「ん~…」

「お前学校は?遅れるぞ」

携帯を見ると7時過ぎ。

やばっギリだ!

慌てて制服に着替えてリビングまで走った。

「食パン焼いたけど食う?」

「食べる~!」

テーブルについてお兄ちゃんが焼いてくれたパンをかじった。朝起きてるお兄ちゃんに会うなんて久しぶりだ。時間がギリのことはさておき、ちょっとわくわくしながらふと昨日のことを思い出した。

「…あ!手紙!」

だけどテーブルに置いた(絶対)ポストがない!!

キョロキョロ見回してもそれっぽいものがない。あんな大きなもの絶対目につくはずなのに。

「お兄ちゃんっ、ここに置いてあったポストは?」

「は?なに?」

台所に立ったままコーヒーを飲んでるお兄ちゃん。

「だからここにあった…っ!」

「あー…あれ」

眉をひそめ、メガネの下の瞳が歪むくらい嫌そうな顔をして私を見た。

「お前さぁ~あんなでっかいゴミ、テーブルの上置いとくなよ。ちゃんと片付けはしろよ」

「違うよ!あれは…っ!」

って手紙のことを話そうとしたけど



「今日ゴミの日だったから捨てといた」



その言葉に話したくなくなった。

「捨てたのーーーーーー!!??」

「捨てた。あんなんゴミだろ、どー見ても」

衝撃的すぎてちょっとだけ目が潤んだ。

「ひどい…」

「は?」

「大志と奏志が作ってくれたやつなのに!!ひどい!お兄ちゃんのバカ!」

「はぁ!?兄に向ってバカとはなんだ!!せっかくゴミ出ししといてやったのに!」

「お兄ちゃんのバカバカ!将来ハゲるんだ!!」

「おまっ、兄ちゃん気にしてんだぞ!!!」

結局私の気持ちなんて全然お兄ちゃんに届くことなく終わった。

(超絶)ポストも今ごろぐっちゃぐっちゃに潰されてるんだろうな。もういいや。

これが日向野家っぽいんだ。