「芽衣っ!いつまで寝てんだよ!」

「わっ、お兄ちゃん!」

ノックもせずに部屋のドアを開けられた。
ビックリしてベッドから飛び上がる。

「早く起きろよ!」

「お、起きるよっ」

慌ててベッドから出て、急いで制服に着替えた。サッと手櫛で髪の毛をといて、スクールバッグを持って一気に階段を駆け下りる。

「おはよう!」

「おはよ、メシ食うだろ?」

「うん、食べる!」

お兄ちゃんが作ってくれた朝ごはんを食べる。
ご飯にお味噌汁に、ささっと流し込むように胃袋に入れて学校へ行く準備をした。

巻き返したおかげでいつも通りと変わらない時間には支度が出来た。

…だけどなかなか玄関のドアを開けられず、もごもごする私の背中をゴミ捨てに行こうとしたお兄ちゃんに無理矢理押されて外に出た。

「「おはよう」」

「お、おはようっ」

「遅せぇな、遅刻するぞ」

なんともいつも通りな奏志が歩き出す。

「あ、ごめんっ」

いつも通り過ぎて…。

「ねぇ芽衣今日数学の宿題やった?全然わかんなかったんだけどできた?」

「あっ!!!忘れてた!!!」

「マジで?珍しいね」

「大志やった!?見せてっ!!!」

「いーけど、全然わかんなかったよ」

宿題の存在も忘れるほどいつも通りが私には出来てないのに。

奏志はどんな気持ちで私に言ったの?

忘れていた宿題を学校で大志に見せてもらうも、ちんぷんかんぷんで結局自分でやった方が早かった。

いつも私に見せてって言ってくる奏志はちゃんとやってきたのかな…?

こんな簡単な会話さえ今はうまくできないよ。



―キーンコーンカーンコーン…



ホームルームが終わると同時、席を立ち上がる。先手必勝、先に言ったもん勝ちだと手を振った。

「私今日先帰るね!行くとこあるから!」

先に声を掛けられる前に言っちゃえばと、2人に嘘をついた。奏志の隣に並ぶのが怖かったから。

「えっ、何!?なんかあるの!?」

「うん、ちょっとね!」

不思議に思った大志とは対照的に奏志は何も言わなかった。言わないならその方がいい、そんな風に思ってただ急いで家まで帰った。